今は、お店を探すときにスマートフォンを使うのが当たり前になりました。
飲食店を探す。
美容院を探す。
病院を探す。
近くのお店を探す。
Googleで検索したり、Googleマップを見たり、SNSで調べたりする人も多いでしょう。
そう考えると、
「これだけネットが普及した時代に、看板ってまだ必要なの?」
と思う人がいても不思議ではありません。
実際、集客の話になると、ホームページ、SNS、Googleマップ、ネット広告など、ネットの話が中心になりがちです。
もちろん、ネットは大切です。
私も「ネットより看板の方が大事だ」と言いたいわけではありません。
ただ、35年以上看板の仕事に携わってきた立場からすると、リアルなお店がある以上、看板にはネットにはできない仕事があると思っています。
私は昔から、
「看板は、24時間、無言で文句も言わず働いてくれる営業マン」
だと考えています。
このことは、私が最初に出版した本にも書きました。
ネット全盛の時代になった今でも、この考えは変わっていません。
ネットでは「たくさんのお店の中から選ばれる」必要がある
ネットでお店を探すのは、とても便利です。
ところが、お店側から考えると大変です。
たとえば、ある地域で飲食店を検索したとします。
たくさんのお店が出てきます。
写真を見る。
口コミを見る。
評価を見る。
メニューを見る。
値段を見る。
お客様は、それらを比較して「この店にしよう」と決めます。
つまりネットでは、まず見つけてもらい、さらにたくさんの候補の中から選んでもらう必要があります。
ネット広告を使えば広告費もかかります。
もちろん、SNSやGoogleマップなど、お金をかけずに情報発信できる方法もあります。
だから、
「ネットは高い。看板は安い」
という単純な話ではありません。
私が言いたいのは、看板にはネットとは違うお客様との出会い方があるということです。
看板は「お店を探していなかった人」にも届く
街を歩いている人が、全員お店を探しているわけではありません。
買い物へ向かっている人。
会社から帰る途中の人。
散歩している人。
たまたまその道を通った人。
そんな人が看板を見て、
「あれ? こんなお店あったんだ」
と気づくことがあります。
さらに、
「なんだろう?」
「ちょっと面白そう」
「入ってみようかな」
となれば、そのままお店に入ってくれるかもしれません。
私はこれを、**「ふらり入店」**と呼んでいます。
最初からその店を検索していたわけではありません。
行こうと決めていたわけでもありません。
店の前を通った。そのとき看板が目に入った。
そこから、お客様との出会いが始まる。
これは、リアル店舗の看板が持っている面白さです。
看板には「お店の顔」と「目印」という仕事もある
看板の仕事は、集客だけではありません。
まず、お店の顔です。
どんな名前のお店なのか。
何をしているお店なのか。
どんな雰囲気なのか。
店の前に立った人が最初に見るものの一つが看板です。
そして、もう一つ大切なのが目印です。
ネットでお店を調べて来た人だって、最後はリアルな場所にやってきます。
そのとき、
「あ、ここだ」
と分かる。
当たり前のようですが、これも看板の大切な役割です。
ネットで知ってもらったお客様と、リアルなお店を最後につないでいるのも看板なんです。
だから私は、
ネットか、看板か。
という二者択一で考える必要はないと思っています。
それぞれ、できる仕事が違います。
看板は24時間働いてくれる営業マン
私は、最初に出版した本の頃から、
「看板は、24時間、無言で文句も言わず働いてくれる営業マン」
と考えてきました。
人間の営業マンのように話しかけることはできません。
だからこそ看板は、短い時間の中で仕事をしなければなりません。
「あそこに店がある」
と気づいてもらう。
「何の店だろう」
と興味を持ってもらう。
「なんか面白そう」
と感じてもらう。
そして、ときには、
「入ってみよう」
と行動してもらう。
これを、言葉や形、色、立体感などを使って伝えます。
一度設置すれば、そこを通る人たちに毎日働きかけてくれます。
もちろん、看板には製作費も施工費もかかります。古くなればメンテナンスも必要です。
それでも、店の前で毎日黙々と仕事をしてくれる。
だから私は、看板を単なる「店名を表示する板」だとは考えていません。
「やきもち餃子」は、言葉と形で振り向かせる
たとえば、私が手がけた看板に「やきもち餃子」があります。
「やきもち餃子」。
ちょっと気になる言葉ですよね。
でも、言葉だけを面白くすればいいとは考えませんでした。
「餃子」の部分をカルプ文字にして立体的にしました。
平面の文字だけで見せるより、立体にすることで視覚の刺激強度を上げ、目に入りやすくするためです。
つまり、
面白い言葉で引っかかってもらい、形でも目を引く。
言葉と形の両方を使って、通行人に働きかけるわけです。
看板は声を出せません。
だからこそ、
「どうすれば気づいてもらえるか」
を考える必要があります。
リアルで生まれた話題が、ネットへ広がることもある
今の看板には、昔とは少し違う仕事も増えました。
その一つが、話題を作ることです。
私たちは「おもしろ看板」を作るとき、単に変わったものを作っているわけではありません。
人が見て、
「何これ?」
と思う。
誰かに話したくなる。
写真を撮りたくなる。
そうした反応まで考えることがあります。
実際、私たちが手がけた「手抜きの店」などのおもしろ看板は、テレビに取材されたり、YouTuberに取り上げられたりしました。
ここが面白いところです。
リアルの看板から生まれた話題が、ネットへ飛んでいく。
看板とネットは、競争相手ではありません。
むしろ、うまく組み合わせることができます。
ただ、この「リアルで話題を作ってネットへ広げる」という話は奥が深いので、別の記事で詳しく書きたいと思います。
ネット時代だからこそ、リアルで何を見せるか
ネットがこれだけ便利になったからといって、看板の役割がなくなったわけではありません。
お店の顔になる。
目印になる。
通りすがりの人に存在を知らせる。
店を探していなかった人に興味を持ってもらう。
ふらりと入店するきっかけを作る。
そして今では、面白い看板が写真や動画になり、SNSやYouTube、テレビなどへ広がることもあります。
昔と比べると、むしろ看板のできる仕事は増えたのかもしれません。
ネットにはネットの仕事があります。
看板には看板の仕事があります。
大切なのは、どちらが優れているかを決めることではありません。
リアルなお店を持っているなら、その店の前を毎日通っている人たちに、何を伝えるのか。
そこを考えることです。
今日も店の前では、看板が立っています。
何も言いません。
文句も言いません。
それでも、店の前を通る人に向かって毎日働いている。
看板は、24時間働いてくれる営業マンです。
だったら、その営業マンに何を語らせるのか。
看板づくりは、そこから考えてみてもいいのではないでしょうか。





