店舗の看板を変えたら、本当にお客様は増えるのか。
看板の仕事をしていると、よく聞かれることです。
もちろん、看板を新しくしたからといって、どんなお店でも必ず売上が上がるわけではありません。
でも私はこれまで、看板を変えたあとに、お客様の動きが実際に変わった店舗を何度も見てきました。
入塾する生徒が増えた学習塾。
患者数が増えた整骨院。
さらには、会社のシンボルができたことで求人募集にまで変化が出た会社もあります。
なぜ、看板を変えると人の行動まで変わるのでしょうか。
私は店舗看板を考えるとき、単に「目立つ看板を作ろう」とは考えません。
その看板を見た人が、次にどう動くのか。
そこから考えます。
学習塾の入口に「合格神社」を作った
東京都江戸川区で小中学生向けの学習塾を運営しているクリップアカデミー様から、北葛西校の移転に伴う外装の相談をいただいたことがあります。
普通の学習塾なら、塾名を大きく掲げて、
「個別指導」
「生徒募集中」
といった言葉を入れる方法もあります。
でも、お客様と話をしているうちに、私は一つのアイデアを思いつきました。
塾の入口に大きな鳥居を作って、「合格神社」にしたらどうだろう。
学習塾に鳥居です。
かなり変わっています。
私は通常の看板案だけでなく、「合格神社」の平面版、さらに立体版も含めて提案しました。
そして採用されたのが、立体の「合格神社」でした。
実はこの仕事、私は最初に、
「提案費用をください」
とお願いしました。
なぜか。
自信があったからです(笑)。
単に面白い鳥居を作ろうと思ったわけではありません。
そこから先まで考えていました。
「見る→立ち止まる→読む→チラシを取る」まで考えた
合格神社を見た人が、
「なんだ、これは?」
と気づく。
そして立ち止まる。
窓に書かれた十箇条を読む。
興味を持ったら、入口に置いてある入塾案内のチラシを取って帰る。
看板を見たあと、人がどう動くのか。
そこまで集客の動線として考えていました。
実際、設置後にはチラシの減りが速くなったと聞きました。
そしてクリップアカデミー様によると、北葛西校の生徒数は2008年2月の33名から、3月45名、4月52名へと増えていきました。
通常は入塾申し込みが少ない時期にも申し込みがあり、ある日には3人のお母さんが揃って入塾申し込みに来たこともあったそうです。
もちろん、入塾者が増えた理由を看板だけに求めることはできません。
授業の内容、先生方の努力、口コミなど、いろいろな要因があるでしょう。
ただ、少なくとも看板をきっかけに、
立ち止まる。 読む。 チラシを取る。
という行動が実際に起きていた。
私が面白いと思うのは、ここなんです。
店舗看板は、ただ見てもらうだけのものではありません。
人を次の行動へ動かす入口にもなる。
これが店舗看板の持つ力の一つです。
16年間、看板を出していなかった整骨院
もう一つ、印象に残っている仕事があります。
埼玉県さいたま市南区の「あおば整骨院」様です。
当時、開業してから16年。
驚いたことに、オープン時に一度チラシを配った以外、ほとんど宣伝活動をしていませんでした。
看板も出していません。
それでも口コミで患者さんが訪れ、遠方から来院する方もいる整骨院でした。
そんな五十嵐先生から、看板の相談をいただきました。
提案してから設置までは、およそ4か月。
といっても、私が4か月間ずっとデザインを考えていたわけではありません(笑)。
五十嵐先生が私たちの提案をほかの方にも見せて、いろいろ意見を聞いていたそうで、返事をいただくまでに時間がかかったんです。
そして、看板を設置しました。
その後、五十嵐先生から驚くような話を聞きました。
患者さんが約30%増えたというのです。
休憩時間を取るのも難しいほど患者さんが増えた、と話してくださいました。
看板に対する反応もありました。
高校生の女の子3人が看板の前で立ち止まり、じっと見ながら、
「かっこいいねー」
と話していたそうです。
この話を聞いたとき、私は改めて思いました。
どれほどいい技術やサービスを持っていても、地域の人に存在を知られていなければ、選んでもらうきっかけがありません。
口コミで十分に患者さんが来ていた整骨院でさえ、看板を出すことで新しく気づいてくれる人がいたということです。
看板の効果は「来店」だけではない
看板によって変わるのは、お店への集客だけではありません。
靴の製造などを行うニチマン様の本社・工場では、巨大な靴をモチーフにした立体的な外装を手がけたことがあります。
完成すると、それが会社のシンボルになりました。
「ここは何の会社なんだろう」
ではなく、外から見ても靴に関係する会社だと伝わるようになった。
そして思わぬ効果もありました。
求人募集にも改善が見られたのです。
クリップアカデミー様でも、合格神社を作ったあと、集客だけではなく求人にも良い変化があったと聞いています。
これは私自身、興味深い結果でした。
看板というと、
「お客様を呼ぶためのもの」
と考えがちです。
でも、人はお客様としてだけ看板を見るわけではありません。
そこで働こうとしている人も見る。
地域に住んでいる人も見る。
取引先も見る。
看板がその店や会社の「顔」になることで、集客以外のところにも影響が出ることがあります。
私は「振り返りたくなる言葉」を考える
では、店舗看板を作るとき、何を書けばいいのでしょうか。
私は、
お客様がふらりと振り返りたくなる言葉
を考えます。
街を歩いている人は、看板を読むために歩いているわけではありません。
友達と話しているかもしれない。
スマートフォンを見ているかもしれない。
今日の夕飯を考えているかもしれない。
そんな人に、
「当店は○○を提供しております」
と一生懸命説明しても、そもそも見てもらえなければ始まりません。
まず、
「ん?」
と思ってもらう。
振り返ってもらう。
そこからです。
合格神社もそうでした。
「学習塾 生徒募集中」
だけではなく、
「合格神社」
という言葉と、大きな鳥居がある。
だから、
「なんだ、これは?」
となる。
でも、ここで注意したいことがあります。
振り返らせれば、それで成功というわけではありません。
メリットだけで、ベネフィットがない看板
私は看板を提案するとき、行動心理学的に人の行動を考えます。
気づく。
振り返る。
読む。
興味を持つ。
そして動く。
この流れを考えていきます。
その中で、店舗看板を見ていて気になるのが、メリットは書いてあるのに、ベネフィットが伝わっていない看板です。
メリットとベネフィットは似ていますが、少し違います。
たとえば学習塾なら、
「個別指導」
「少人数制」
といったものは、その塾が提供している特徴やメリットです。
でも、子どもや保護者が本当に欲しいのは、その先ではないでしょうか。
成績を上げたい。
志望校に合格したい。
自信を持って勉強できるようになりたい。
つまり、そのサービスを利用した先にある未来です。
「合格神社」というアイデアには、単に「変わった看板で目立たせよう」という狙いだけではありませんでした。
「合格」という、学習塾に通う人が求める未来が一目で伝わります。
だから私は店舗看板を考えるとき、
「うちには、こんな設備があります」
「こんなサービスがあります」
という店側の話だけで終わらせないようにしています。
この店を利用すると、お客様にどんな良いことがあるのか。
そこまで看板で伝えられないかを考えます。
「目立つ看板」と「集客できる看板」は同じではない
ここは誤解してほしくないところです。
大きくすればいい。
派手な色にすればいい。
変なものを付ければいい。
そういう話ではありません。
「なんだ、これは?」
と振り返ってもらうことは、入口です。
その先に、
「自分に関係がありそうだ」
「ちょっと読んでみよう」
「ここなら自分の悩みを解決してくれそうだ」
というものがなければ、人は動きません。
合格神社も、鳥居だけ作って終わりではありませんでした。
鳥居で気づいてもらい、十箇条を読んでもらい、さらにチラシを持って帰ってもらう。
そこまでを一つの流れとして考えました。
アイキャッチと集客動線は、セットで考える。
私は店舗看板を提案するとき、そこを意識しています。
自分のお店の看板を、一度お客様の目で見てみる
店舗看板で集客を考えるなら、一度、お店側の立場を離れてみるといいと思います。
そして、お客様になったつもりで店の前を歩いてみる。
この看板に気づくだろうか。
振り返るだろうか。
何の店か分かるだろうか。
自分にどんな良いことがあるのか伝わるだろうか。
そして、
この店にちょっと入ってみようかな。
と思えるだろうか。
クリップアカデミー様では、合格神社に気づいた人が立ち止まり、十箇条を読み、チラシを持ち帰るという動きが生まれました。
あおば整骨院様では、16年間出していなかった看板を設置したあと、五十嵐先生から患者数が約30%増えたという報告をいただきました。
看板は、そこにあるだけでは人を動かしません。
人が見て、何かを感じて、その次の行動を起こす。
そこまで考えて初めて、店舗看板は集客の道具になっていきます。
何なら振り返るだろう。
何なら、もう少し読んでみたくなるだろう。
そして、何なら店に入ってみようと思うだろう。
店舗看板の集客は、その人の「振り返る」から始まります。





