看板の仕事を長くやっていると、「ああ、これはもったいないな」と思うことがあります。
もちろん、最初から看板製作で失敗しようと思っている人なんていません。
できれば安く作りたい。自分の好きなデザインにしたい。何社かの看板屋から見積もりを取って比較したい。どれも普通のことです。私だって何かを買うなら、安い方がいいです。
でも看板の場合、それだけで決めてしまうと、後から、「もう少し考えておけばよかった」となることがあります。実際、私はそういうケースを何度も見てきました。
今回は、看板製作や看板作成で後悔しやすいパターンについて、実際に経験したことも含めて書いてみようと思います。
安く作ることと、安さだけで決めることは違う
看板価格は安い方がいい。これは当然です。予算が無限にある人なんていません。だから私は、「高い看板を作った方がいい」と言いたいわけではありません。問題は、安さだけで決めてしまうことです。
看板って、一度作ったら結構長く使います。毎日、店の前を通る人に見られます。雨の日もあります。夜中もあります。店が閉まっている時間もあります。
私は以前から、「看板は24時間働いてくれる営業マン」と言ってきました。そう考えると、数年間働いてもらう営業マンを、価格だけで選んでしまうのは少しもったいない気がします。
実際、「予算を抑えたい」ということで小さく、無難にまとめたものの、完成してから、「やっぱりもう少し何とかすればよかった」となることがあります。そして結局、作り直す。最初に節約したつもりが、二度作ることになれば、かえって高くなってしまいます。
安く作ることが悪いのではありません。どこを削って、どこを削らないのか。ここが大事なんだと思います。
看板を出せないテナントに入ってから気づく
これは本当にもったいないと思います。先にテナントを契約してしまうケースです。
場所を気に入った。家賃も予算内だった。駅からも近い。内装のイメージもできた。契約する。
そして、その後で、「看板はどこに付けましょうか?」となる。現地へ行ってみると、「ここ、看板がほとんど出せませんね」ということがあります。建物のルールで付けられない。付けられる場所が決まっている。思っていた大きさの看板が出せない。道路からほとんど見えない。
せっかくいい店を作っても、存在そのものに気づいてもらえない。これは看板屋として見ていると、本当にもったいないです。
もちろん、テナントを決める条件は看板だけではありません。家賃もあります。立地もあります。広さもあります。でも店舗を探す時には、「ここに入ったら、看板はどこに出せるんだろう?」という目でも一度見てほしいんです。
看板は、店が完成してから最後に考えるものではない。私はそう思っています。
相見積もりになると、提案が消えてしまうことがある
これは少し書きにくい話です。相見積もりが悪いと言いたいわけではありません。価格を比較したい気持ちはよくわかります。私だって買い物をする時には比較します。
ただ、「何社かに同じ条件で見積もりを出してもらって、一番安いところに決めます」となると、看板屋としては少し難しくなります。なぜか。提案ができなくなってしまうからです。
看板を提案する時には、結構いろんなことを考えます。現地を見る。どこから人が来るのかを見る。車から見るのか、歩いて見るのかを考える。周囲の看板を見る。壁面看板がいいのか。袖看板がいいのか。立体看板にした方がいいのか。そもそも何を書けばいいのか。こういうことを考えるのも看板製作の仕事だと思っています。
ところが最初から価格だけを比較する相見積もりになると、「同じ仕様でいくら?」という話になりやすい。そうなると、アイデアや提案という付加価値が入りにくくなります。これはお客様にとっても、もったいないと思います。
相見積もりをすることが悪いのではありません。価格だけを比べるのか、提案も比べるのか。ここは結構大きな違いです。
お客様のデザインを忠実に作って、失敗したことがある
これは私自身の失敗です。以前、お客様が作ったデザインイメージを持ってこられたことがありました。「こういう感じにしたい」というものです。こちらも、「わかりました」と、そのイメージをできるだけ忠実に再現しました。
完成したものを見ても、デザインとしては悪くありませんでした。情報もきちんと入っていました。サービス内容もわかりました。ところが、思ったように集客につながりませんでした。結局、看板を作り直すことになりました。
後になって考えました。何がいけなかったんだろう。デザインが悪かったわけではないんです。広告として見ることと、看板として見ることは違う。そこだったんじゃないかと思います。
広告なら、少し時間をかけて読んでもらえることがあります。でも看板は違います。歩いている人なら数秒。車ならもっと短いかもしれません。その一瞬に、「あれ?」と思ってもらえるか。何か一つでも覚えてもらえるか。
看板には、看板の見せ方があるんですね。私自身、この失敗からかなり勉強しました。
メリットは書いてある。でもベネフィットがない
セールスコピーライティングには、「メリット」と「ベネフィット」という考え方があります。少し難しく聞こえるかもしれません。でも、街の看板を見るとわかりやすいです。
例えば、「餃子あります」。これは情報です。間違ってはいません。でも、それだけではなかなか記憶に残りません。
横浜・桜木町の近く、野毛に「三陽」という中華料理店があります。そこで目にしたのが、「毛沢東もびっくり名物餃子」という言葉でした。
これ、気になりませんか。私は気になりました。そして覚えてしまいました。「餃子があります」だけだったら、たぶん覚えていません。
何が違うんだろう。商品そのものの説明だけではなく、「なんだ、それ?」という感情が生まれているんですね。
看板を見る人は、看板を勉強しようと思って歩いているわけではありません。たまたま通りかかっただけです。その人の頭の中に一瞬入り込むには、スペックやメリットだけでは足りないことがあります。
その商品を買ったらどうなるのか。どんな気持ちになるのか。どんな体験が待っているのか。私は、看板にもベネフィットの考え方が必要だと思っています。
目立つ看板を作ったら、撤去することになった
「じゃあ、とにかく目立てばいいんですね」と思うかもしれません。これも違います。私自身、失敗しています。
以前、かなり目立つおもしろ看板を作ったことがありました。インパクトはありました。人の目にも入りました。ある意味、狙い通りです。ところが、周囲からクレームが来てしまいました。結局、その看板は撤去することになりました。
せっかく作った看板です。撤去するのはつらかったです。でも、そこで気づきました。目立つことと、悪目立ちすることは違う。
看板は自分のお店だけのものではありません。街の中に置かれます。隣にもお店があります。近くに住んでいる人もいます。街並みもあります。人を振り向かせれば何でもいいわけではないんですね。
この失敗も、私にとっては大きな勉強になりました。
看板製作で最初に決めたいのは「何を作るか」ではない
看板の相談には、いろんなパターンがあります。「現地を見て提案してほしい」という方もいます。「インパクトのある看板を作りたい」という方もいます。作りたいものがすでに決まっていて、「見積もりだけください」という方もいます。どれが正解という話ではありません。
ただ、長く看板の仕事をしてきて思うのは、看板種類や看板価格を決める前に、一度だけ考えてほしいことがあります。誰に来てもらいたいのか。です。
何を作るかは、その後でもいいんです。誰に来てもらいたいのか。何を見てほしいのか。何を覚えてほしいのか。
そこが決まってくると、看板デザインも変わります。言葉も変わります。大きさも変わります。場合によっては、立体看板がいいかもしれません。逆に、派手な看板なんて必要ないかもしれません。
看板製作って、看板を作る前の方が大事なのかもしれません。
看板屋に頼むなら、値段だけではなく提案も聞いてみてほしい
東京で看板屋を探せば、たくさんの会社が出てきます。名古屋にもたくさんあります。ネットで「看板屋 東京」「看板製作 東京」と検索すれば、価格を比較することもできます。それは便利なことです。
でも、せっかく看板屋に相談するなら、「これを作ったらいくらですか?」だけではなく、「この店だったら、どんな看板がいいと思いますか?」と一度聞いてみてください。そこで何を提案してくれるのか。私はそこも、看板屋を選ぶ一つの基準だと思っています。
看板デザイン・アイデアラボでは、東京・中野区に営業所、名古屋に本社があり、看板製作、看板デザイン、立体看板、おもしろ看板などのご相談をお受けしています。
「何を作ればいいかわからない」という段階でも構いません。もちろん、「作りたいものは決まっているので見積もりだけ欲しい」というご相談もあります。
看板にはいろんな頼み方があります。大事なのは、作ってから後悔しないことだと思っています。





