看板を作ることになって、何社かに見積もりをお願いする。
A社は80万円。
B社は100万円。
C社は120万円。
さて、どこに頼みますか?
「同じ看板なら、80万円の会社が一番安い」
そう思うかもしれません。
でも、看板の見積もりは、家電製品の価格を比較するのとは少し違います。
同じメーカーの同じ型番のテレビなら、価格を比較して一番安い店から買うという考え方もできます。
ところが看板は、オーダーで作るものが多い。
会社によって、提案する看板も違えば、仕様も違います。施工方法も違うことがあります。
つまり、見積書に書かれた総額だけを比べても、そもそも同じものを比較しているとは限らないのです。
私は長年、看板の見積もりを作ってきました。
その経験から言うと、看板の見積もりを見るときに大切なのは、
「いくらなのか」だけではなく、「その金額で何をしてくれるのか」まで見ること。
だと思っています。
看板の見積もりは、サイズだけでは出せない
「看板を作りたいので、見積もりをください」
こういうお問い合わせをいただくことがあります。
では、看板のサイズさえ分かれば見積もりを出せるのか。
そんなに単純ではありません。
私が見積もりをするときには、たとえば次のようなことを確認します。
看板の仕様。
サイズ。
設置場所。
施工条件。
何階に取り付けるのか。
高所作業車は必要なのか。
夜間工事になるのか。
その場所に設置して違反にならないのか。
そして工期やスケジュール。
同じ大きさの看板でも、1階の壁面に取り付けるのと、高い場所に取り付けるのでは施工条件が違います。
高所作業車が必要になれば、その費用もかかります。
昼間に施工できるのか、夜間工事になるのかによっても条件は変わります。
だから、看板の見積もりは、
「幅○メートル、高さ○メートルだから○万円」
だけでは決められないんです。
現地を見なくても見積もれる場合はある
では、看板の見積もりを出すには、必ず現地調査が必要なのか。
これも、必ずというわけではありません。
私は、現地を見ずに見積もりを出すこともあります。
その場合は、お客様に看板を設置する場所の写真や寸法などを送ってもらいます。
それだけでなく、周辺の道路状況なども分かるようにしてもらいます。
必要な情報が揃えば、それをもとに見積もりを作れるケースもあります。
ただし、高所作業が絡む現場は別です。
私は、高所作業の現場については、できれば実際に現地を見てから見積もりを出したいと思っています。
看板そのものだけではなく、どうやって施工するのかまで考えなければならないからです。
見積もりとは、完成する看板の値段だけを計算するものではありません。
その看板を現場に持っていき、安全に取り付けるところまで含めて考えるものです。
「看板製作施工 一式○○万円」には注意する
見積書を受け取ったら、私ならまず明細を見ます。
特に気になるのが、
「一式」
という書き方です。
もちろん、見積書の中で「一式」という表現を使うこと自体が悪いわけではありません。
ただ、
「看板製作施工 一式 ○○万円」
だけでは、その金額に何が含まれているのか分かりません。
私たちが現場施工の見積もりをするときには、案件によって、たとえば次のような項目があります。
・現場施工費
・現場調査費
・消耗品機材損料
・足場費(必要な場合)
・高所作業車費(必要な場合)
・クレーン車費(必要な場合)
・ガードマン費(必要な場合)
・道路使用許可費(必要な場合)
・車両運搬経費
・諸経費
もちろん、すべての現場でこれら全部が必要になるわけではありません。
1階の小さな看板を取り付ける仕事と、大きな看板を高所に設置する仕事では、必要になるものが違います。
だからこそ、相見積もりを比較するときには、
「この金額には何が入っているんだろう?」
と明細を見ることが大切です。
A社には高所作業車が入っている。
B社には入っていない。
それなのに総額だけを比べて、
「B社の方が安い」
と判断してしまったら、正しい比較にはなりません。
同じ工事でも、会社によって金額が変わる理由
同じような看板工事でも、会社によって見積金額が違うことがあります。
その理由の一つが、
その会社がどんな設備を持っているか
です。
たとえば、高所作業車。
高所作業車を自社で持っている看板会社もあれば、必要になるたびにレンタルする会社もあります。
レンタルすれば当然、その費用がかかります。
一方、自社で高所作業車を保有している会社なら、レンタルする会社より安く提示できる場合があります。
つまり、見積金額の差を見て、
「この会社は高いから、たくさん利益を取っているんだろう」
と単純には言えません。
会社によって、設備も違う。
製作体制も違う。
施工体制も違う。
そうした違いが、見積金額にも表れてきます。
看板の相見積もりは「同じ商品の価格比較」ではない
看板の相見積もりについて、私は少し面白いと思っていることがあります。
一般のお客様は、看板をそんなに頻繁に頼むわけではありません。
ですから、
「この材料を使って、このサイズで、この厚みにして、この仕様で、この施工方法で見積もってください」
と、細かい条件をすべて揃えて何社にも依頼する人は、案外少ないように感じます。
実際には、
「ここに看板を付けたい」
「お店の看板を新しくしたい」
というところから相談が始まり、それぞれの看板会社が提案する。
そうすると、A社とB社では、出てくるもの自体が違うことがあります。
A社はこのデザイン、この仕様で100万円。
B社は別のデザイン、別の仕様で80万円。
こうなると、単純に20万円の差だけでは比較できません。
お客様も最終的には、
「この提案内容で、この金額ならどうか」
というバランスを見て決めているのではないでしょうか。
だから私は、看板の相見積もりでは、
金額と提案内容をセットで見る
ことが大切だと思っています。
安いか高いかだけではなく、
「自分が欲しい看板になっているか」
「この内容なら、この金額を払ってもいいと思えるか」
そこまで見て決める。
看板の相見積もりは、同じ型番の商品を比べる価格比較とは少し違うんです。
「デザイン提案無料」は、本当に0円なのか
見積もりでもう一つ、私が気になる言葉があります。
「デザイン提案無料」
です。
無料でデザインを提案してもらい、気に入ったら看板を注文する。
お客様にとっては頼みやすい仕組みだと思います。
ただ、一つ考えてみてほしいことがあります。
デザインを作るのは人です。
デザイナーが仕事をする以上、人件費はかかります。
ですから、表向きには「デザイン費0円」となっていても、会社としてそのコストをどこかで負担しています。
製作費など、別の費用の中に含まれている場合もあるでしょう。
私は、デザイン費を最初から見積書に入れています。
おおよその作業時間を考え、さらに、そのデザインが生み出す付加価値も考えて金額を出します。
ですから、
「デザイン無料=得」
と単純に考えるのではなく、
「その会社ではデザインにかかるコストをどう考えているのか」
まで見た方がいいと思っています。
デザインには、ちゃんと価値があります。
そして、デザイナーの仕事もタダではありません。
私にも、追加工事になってしまった経験がある
見積もりを作るときには、できるだけ現場の条件を確認します。
それでも、実際に工事を始めてみて、想定していなかったことが起きる場合があります。
私にも経験があります。
浅草で、ある看板の夜間工事をしたときのことです。
夜中に工事をしていたところ、近隣の方から、
「うるさくて眠れない」
という苦情が入りました。
工事をいったん中断することになりました。
浅草は、商売をしている場所と住居が近いところもあります。
夜間なら工事ができる。
そう考えるだけでは足りなかったんです。
そこで、あらためて近隣の方々に挨拶をしました。
警察にも相談し、道路使用許可の時間を早めてもらいました。
そして、
夜の23時までに音の出る仕事を終わらせる
という条件で、あらためて施工しました。
当然、工事を一度中断して、もう一度施工するわけですから追加費用が発生します。
幸い、お客様が事情を理解してくださる良心的な方で、その追加費用もいただくことができました。
でも、この経験から学んだことがあります。
看板の見積もりでは、看板の材料やサイズだけを見ていてはいけない。
その場所で、何時に、どんな方法で施工するのか。
さらに、その周りには何があるのか。
そこまで考える必要があるということです。
見積もりの精度は、現場をどこまで想像できるかでも変わる。
これは、実際に失敗したからこそ分かったことです。
見積もりには「有効期限」がある
見積書をもらったら、金額や明細だけでなく、
見積有効期限
も確認してみてください。
私が出す見積書では、基本的に有効期限を1か月にしています。
理由の一つは、原材料の価格が変わることがあるからです。
見積もりを出した時点ではこの金額だった。
でも、数か月後には材料価格が上がっている。
そういうこともあります。
ですから、以前もらった見積書を何か月も経ってから持ってきて、
「この金額でお願いします」
と言っても、同じ金額ではできない場合があります。
小さく書かれていることもあると思いますが、見積書を受け取ったら、有効期限も見ておいた方がいいでしょう。
私が見積書を見るなら「明細の単価」を見る
では、私自身がお客様の立場で、看板会社から見積書をもらったら、どこを見るか。
私は、
明細の単価
を見ます。
看板の仕事を長くやっていますから、明細を見れば、
「この単価なら妥当だな」
「ここは少し高いな」
ということが、ある程度分かります。
ただ、一般のお客様に同じことを求めるのは無理があります。
看板なんて、人生でそう何度も注文するものではありません。
高所作業車がいくらなら安いのか。
施工費はいくらなら妥当なのか。
初めて看板を頼む人に分かるはずがありません。
だから、一般のお客様にまず見てほしいのは、
何にお金がかかっているのかが分かる見積書になっているか
ということです。
「一式○○万円」だけではなく、何を作り、どんな施工をして、どんな費用が含まれているのか。
分からなければ、看板会社に聞けばいいんです。
きちんとした理由があって必要な費用なら、説明してもらえるはずです。
看板見積もりで失敗しないために確認したいこと
看板の見積書をもらったら、私は次のようなところを確認してほしいと思っています。
看板の仕様はどうなっているか。
施工費には何が含まれているか。
高所作業車や足場、クレーン車などは必要なのか。
ガードマンや道路使用許可などの費用は入っているか。
デザイン費はどうなっているか。
追加費用が発生する可能性はないか。
見積有効期限はいつまでか。
そして相見積もりなら、
各社の提案内容と金額のバランスはどうか。
ここまで見てから判断する。
総額だけを見て、
「A社の方が20万円安い」
と決めるのは、少し早いと思います。
見積書は「看板の値段」だけを書いた紙ではない
看板の見積書というと、
「この看板はいくらなのか」
を見るものだと思われるかもしれません。
でも、私はそれだけではないと思っています。
どんな看板を作るのか。
どんな材料を使うのか。
どんな場所に取り付けるのか。
どうやって施工するのか。
どんな設備が必要なのか。
いつ工事をするのか。
そこまで考えて、初めて金額が出てきます。
だから、看板の見積もりで失敗しないために大切なのは、
一番安い見積書を探すことではありません。
その金額の中に何が入っているのか。
そして、
「この提案、この仕様、この施工内容で、この金額なら納得できる」
と思えるかどうか。
看板の見積もりは、金額だけではなく、中身を見て決める。
私は、それが一番大切だと思っています。





